データ・ドリブンに興味が出てきたら、お願いしますからどうかこれだけは読んでおいてください。
データ・ドリブン・マーケティングとは
データ・ドリブン・マーケティングとは文字通り、データによってドライブ(駆り立てられる、運用される)マーケティングを言います。意思決定の際に定性分析に加え、定量的な分析に基づいて判断を行うマーケティング手法で、データ分析を参考にすること自体はどこの組織でも行っていると言うご意見も聞こえてきますが、ではそういった「データ・参考・マーケティング」と「データ・ドリブン・マーケティング」はどのように違うのかについて見ていきたいと思います。 なお、ここでのデータとは企業活動の中で発生する様々なデータ、例えば売上データや顧客データからWebサイトへのアクセス数や店舗での会員数など多様なデータを指します。

データ・ドリブンは大企業だけの話?
「データ・ドリブン」と検索すると多くのメディアでは「費用がかかる」「DMP(データマネジメントプラットフォーム)やMA(マーケティングオートメーション)の導入が必要」とあり、D2Cブランドのスタート時や中小企業には無用な施策と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、小さな組織でも少しでもWebを重要な認知・販売のチャネルと考えるならデータ・ドリブンは必要で効果のある考え方となるので、そういった大企業以外のご担当の方も是非知っておいて頂きたいと思います。上記のツールについては基本的にスタート時は無料のアナリティクスツール等で始めることも可能です。無理に高額な初期費用と運営費をかけ、ツールリストラの対象となるよりも、効果を徐々に確かめ、組織としてデータに基づいた判断・行動がとれるようになる方がベターではあります。
また、成果ということで言うと(別の記事で詳細書きます)分析の半分はユーザーインサイトの考察や仮説設定・検証からなります。この意味でも売上や会社組織、またカスタマーにあったスケールでデータ・ドリブンを始めることが望ましいこととなります。

なぜ、データ・ドリブンなのか - いつも頭の隅にはUXの改善を
「データ・参考・マーケティング」と「データ・ドリブン・マーケティング」を分ける要素は何があるでしょうか?ビジネスにおける全ての施策を検討するときに必要な事は目的です。データ・ドリブンの目的をわかりやすく明示していたのはリコー社の『リコーのマーケティング支援』でした。(https://drm.ricoh.jp/lab/glossary/g00054.html)
ここに記載されている目的とは「顧客1人1人のユーザーエクスペリエンス(※ユーザー体験、UX)を向上する」とあり、まさに!D2Cブランドの達成するべきミッションと同じことがわかります。データを参考程度に使うわけでなく、データに基づくカスタマーインサイトからつぎの施策が打てる姿があるべき「データ・ドリブン・マーケティング」となります。また、本記事ではUXの他に費用対効果の向上という目的についても実例を交えながら見ていきたいと思います。
UXの向上
前出の『リコーのマーケティング支援』ではUSJ(ユニバーサルスタジオジャパン)を例に、カスタマーの行動をセンサー、GPS情報やビーコンなどで拾い、例えば朝に入口付近にいるカスタマーに対しカチューシャなどのお揃いグッズを提供することで顧客満足度を向上させているとのことでした。その他の事例としては最近ChatBot等のツールが多く見られますが、ユーザーの検索情報に応じてFAQページを改善することでFAQページからの離脱率を下げる施策などがあります。
費用対効果の向上
UXの向上の他、組織の決裁者として最も気になる費用対効果を向上させる目的があります。つまり、投下した費用に対してどの程度の成果を達成できたか、できなかった施策を早々に中止(または予算を削減)し、効率的に予算配分を行えるかを実施することにあります。これはWeb広告ではとても一般的ですが、A/Bテストを行い改善していくのはとても一般的です。ただし、ここで注意したいのは以下に詳細を記載しますが、非財務系数値と財務系数値をきっちり区別しておく必要があります。費用対効果の向上を求めるあまり、非財務系数値に端的な売上の向上を求めるのはデータ・ドリブン・マーケティングの崩壊を招く可能性があります。事前にコンセプトのすり合わせを充分にしましょう。

データってやっぱり手ごわい!データ・ドリブンにおける指標とは
データ・ドリブンを行う目的が理解できれば、実際に始める前に、あとワンステップ注意をお願いします。それは今後データ・ドリブンを推進するときの非財務系数値の壁です。非財務系数値とは”売上”とか”利益”という誰が見ても成功しているかわかる財務系数値とは別で、例えばSNSの”フォロワー”の推移のように、一見売上と直結しない値です。非財務系の数値を見て、決裁者は「フォロワーが二倍になれば売上は二倍になるのか?」「遷移率が上がれば利益は増えるのか」という疑問を担当者に投げかけ、データ・ドリブンが行き詰まることとなります。
決裁者は予算配分の決定権限と”売上”や”利益”を達成する責任を背負うため、こういった疑問や焦りが出ることは当然と言えます。ただしそういった数値を追いかけ過ぎて、他の重要な数値が疎かになってはデータ・ドリブンを継続させることは難しくなります。そういう場合はデータを財務系数値と非財務系数値とその他の3つに分類し管理すると良いかと思います。
財務系数値とは
月間の売上高や、売上高からコストを差し引いた利益、投下広告費に対する売上(ROAS)または顧客単価などは、決算書におけるP/L(損益計算書)に直接関係する数値を指します。通常財務系数値はキャンペーンや一定期間の広告成果を検証するために集計され、コストパフォーマンスが算出されます。施策に対する最終成果という意味で『過去指標』と呼ばれます。
非財務系数値とは
ブランド認知度としてのSNSのフォロワー数やユーザーの投稿を指すUGC数、ネットショップであれば商品サンプルの請求数等が非財務系数値と呼ばれてます。ウェビナ―(WebとSeminarを掛けた造語)におけるリード等もこの非財務系数値に含まれます。この数値は最終成果である売上(or利益)に対する先行指標であることから『将来指標』と読んでいます。
データ・ドリブンが苦手な組織はこの非財務系数値の扱い方が苦手、または個人個人の思いがバラバラで結果に対する期待値が違うことがあると聞きます。あるあるパターンでは決裁者が過度に”過去指標”である顧客獲得単価に固執する→担当者にもそのプレッシャーを与える→担当者の評価が”過去指標”によって左右されるため、過去指標に注力→その結果、キャンペーンや広告を主体とした従来型の施策から抜け出せないことになるというものです。
その他(内部管理系数値)
その他の内部管理系の数値は、予算消化進捗、作業時間の改善など組織として管理するべき数値となります。この数値は施策実行の効率性を図るために管理するべきものとなります。

カスタマージャーニーやULSSASを思い出そう
そういった負のスパイラルに陥らないためには設計の段階で非財務系数値がどのような意味を持っているかきちんと認識をすり合わせることが重要です。特に『D2C不要論』でも述べたULSSASモデルではUGCが増える→指名検索数が増える→(サンプル)購入に至る→UGCが増えるというユーザーフローを意識しましょう。認知度の向上、ロイヤルカスタマーの向上、指名検索やサンプル購入数の向上は周り回って売上に到達する大切な数値です。広告での露出→売上獲得という消耗戦(もちろん認知度がないときには広告も必要)になるとD2Cブランドとして顧客へ提供するべき体験やブランドロイヤルティがそもそも育たなくなる危険があります。
プロジェクトが道半ばで頓挫しないためにも、D2Cブランドスタート時に決裁者を含めたチームメンバーでその数値がプロジェクトにおいてどのような意味を持つのか話し合いをすることをお勧めします。