
D2Cは不要?D2Cブランドと2020年の消費者行動
『D2Cブランド』と聞いて、古くは男性用髭剃りメーカーのDollar Shave ClubからメガネのWarbyParker, アパレルのEverlane,日本市場でも新しい価値観を提供しているAllbirdsなどのアメリカのブランド、また日本でもスーツメーカーのFabric Tokyoなど様々な新興ブランドを思い浮かべる方も多いと思います。これらのD2Cブランドは既存の市場の中で既存のメーカーにないポジションをとり、顧客の獲得に成功してきました。 本記事ではD2Cブランド隆盛の背景とD2Cブランド自体の分解を行ってみたいと思います。

1.D2C不要論
あなたが中規模アパレルメーカーのネット販売担当者または化粧品会社の企画担当で新しくネット販売用のブランドを任されたとします。BtoC販売の経験がなくても販売がネットとなれば消費者のニーズをとらえるだけでなく、販売方法についても考察しなければなりません。
大量に同じものを作り、コストパフォーマンスに優れた商品を多額の広告費をかけ大量に販売
これはユニクロやニトリ、ナイキや資生堂など一部の大企業ができる販売の方法ですね。マス×ネットの広告や店舗などあらゆるところで消費者にアプローチし、ブランドおよび商品の浸透と販売を図ります。ただ多額の資金が必要となるため、通常中規模メーカー、特にこれからネットで販売しようという場合、この戦略をとることはまれかと思われます。
特定の機能やデザインに特化した製品を作る
ダイソンや男性用シャンプーのアンファーなど一つの特徴に特化した製品を作ることは現実的かもしれません。ただしその場合、やはり、本当に優れていることが消費者に分かる程度に他商品との違いがなければなりません。
低価格で大量に販売する
商品の製造や仕入れによりますが、大量に品揃えがあることはネットショップとしてメリットです。この場合、自社ショップ以外にも楽天やヤフーなどのモールにも出店し薄い利益率で大量に販売する戦略となります。
小売店の消費者にネットに来てもらって売る
最近はOMO(Online merges with Offline)という言葉があるように店舗とネットを自由に行き来してもらい、消費者にとって都合の良い方で購入してもらうケースが多々あります。この場合、消費者としては慣れ親しんだメーカーの商品である程度商品の内容もわかっているため安心感をもって購入することが可能です。
最後に、世界観や考え方またはライフスタイルなどの所謂ブランディングで売る
本記事ではこの5番について見ていくのですが、良質なブランドを作ること自体は目新しいことではなく、重要な点は「ネットで成功するブランド」である点です。
ここではネット販売の戦略をいくつかのパターンで分けてみました。もしあなたがネット販売の役職についたり、ネットで物を売ろうと思ったとき、この記事で話しているD2Cという概念自体は一旦あまり重要ではありません。特に4番にあたる小売りでのノウハウや人材が強い場合などにはD2Cという考え方自体が不要になる可能性もあります。あなたや会社の持つリソースや強みを十分検討した上でD2Cブランドへの投資判断を行うことが必要となります。
2.D2Cの時代 -プロダクトと体験型メディア
検討して頂いたうえで、やっぱり今っぽい方法でネット販売をしていきたい方のために、また、このサイトの存在意義のためにD2Cの話を続けます。本やネットで「D2C」と検索すると、よく“世界観”や“メディア”というキーワードに遭遇します。自社メディアにてそのブランドの考え方や世界観を写真や動画などで共有し、ユーザーをそのブランドの世界に引き込みます。例えばアメリカの寝具メーカーのCasperは“睡眠”に関する情報を多く発しています。媒体は1つではありません。Blog、Facebook、Twitter、Instagram、Youtubeなどあらゆる媒体上で彼らのブランドや商品情報、また“睡眠”について知ることができます。
体験できるメディア
では何がD2Cブランドとしての特徴でしょうか?我々はD2Cブランドのメディアは単なるメディアではなく、「体験できるメディア」であることが重要と考えています。先のCasperを例にとります。睡眠に関心ある人、または関心はなかったけどたまたまTwitterで流れてきた投稿が目に入り興味を持った人がいたとします。Casperのブログでは絵とテキストで、Twitterではテキストで、Youtubeでは動画などその方達の都合に合わせて情報をとることができます。もっと詳しい情報が欲しいと思ったあなたはCasperのサイトに行きつきます。そこではChatでスタッフが対応してくれ、納得したあなたはCasperのマットレスを100日間のフリートライアルで実際に睡眠をとることができます。また、他の人の睡眠を参考にしたくなったあなたは他の消費者が投稿したInstagram記事に安心感を感じます。
D2Cはネットを主たる販売経路としますが、その過程で提供できる情報やトライアルなどの実体験は実店舗にも劣らない体験として提供することが可能です。またはそういう体験を提供できるブランドでなければ消費者からの信頼を得ることが難しいとも言えます。
3.その時消費者はどう反応するか?
前章でD2Cブランドの特徴として体験できるメディアと言いました。D2Cブランドが発信する情報やサービスについて消費者はどのように反応するのでしょうか。ここではホットリンク社が提唱しているULSSAS(ウルサス)モデルを見ていきたいと思います。 ULSSASとは以下のステップの頭文字を集めた単語となります。
U: UGC(User Generated Contents)
L: Like
S: Search1(SNS)
S: Search2(Search Engine)
A: Action
S: Spread
ULSSASにおける消費者のフローとは:
- (認知)消費者はたまたま、SNSで流れてきた別のユーザーの投稿に目が留まります。
- (興味レベル1:いいね)少し興味があり、思わずその投稿にいいね👍を押します。
- (興味レベル2:SNS検索)もう少し興味が出てきたのでいつも見ているSNS内で検索をしてみます。
- (興味レベル3:サーチ検索)もう少し体系立てた情報や消費者目線だけではなく、別の観点の情報を得るためにGoogleやYahoo!で検索してみます。
- (行動:購入)あらゆる角度から見て納得できたので買ってみようという気になりました。
- (拡散)使ってみた感想は…やっぱりよかった!元々SNSで知った商品なので他の人が投稿をしているのを知っています。そういった情報を参考に自分も投稿してみます。

一番始めのUGCはUser Generated Contentsの略語でブランドではなく、消費者(ユーザー)からの投稿を指しています。この図で重要なことは消費者自身の投稿に別の消費者が反応し、“口コミ”という形で一人から何十、何百という伝達が起こるところです。
- 広告だと…D2Cブランドから一人への伝達
- UGCだと…一人から多数への伝達


このUGCについては別の記事で詳細を見ていきますが、「共感」とか「利点」、「安心」が大切になると考えています。また消費者はテキストや画像、動画、最近では音声など様々な媒体に柔軟に対応しています。事業者としてはユーザーのフローを理解した上で、ステップごとに誘導施策や数値管理することが必要になります。(財務系数値・非財務系数値のデータ・マーケティングはまた別の記事で話しましょう!) この章のまとめとしては①成果を上げるためにはUGCを獲得する必要がある②消費者の心理の変化に沿って、数値管理をする必要がある。
4.改めてD2Cって何なの? – PVCEとは
この記事ではD2Cについて“体験できるメディア”という書き方をしましたが、ここでは実際にどういう観点でメディアを作るのか、どういったところが難しいのかを見てみたいと思います。タイトルにPVCEと書きましたがこれはP(Product), V(Vision), C(Creative), E(Engineering)の略語です。D2Cブランドはおおよそこの4つの事象と付け加えるならS(Service)で語ることができます。
P(Product)
V(Vision)
C(Creative)
E(Engineering)
S(Service)
こちらの図はD2Cブランドを構成するイメージ図なのですが、VCEがPを支える構成となっています。D2Cと言っても第一章で見たように1つの売り方であることに変わりはありません。商品は商品として消費者にブランドの世界観として価値を提供することが必須です。D2Cのプロダクトを考える観点としてはその商品は消費者のどのような課題を解決するか、これまでの煩わしさや不透明になっていたことがクリアになり消費者が信頼して使用する(または共有する)ことができるか、こういった課題の解決ができる商品こそD2Cのコアとバリューとなりえます。

企業やサービスにとってビジョンは新しいものではありません。日本の大企業はすべからく大きなビジョンを掲げています。D2Cブランドの掲げるビジョンとこれまでのビジョンの違いは、例えばWarby Parkerの“販売したメガネの個数だけ発展途上国にメガネを寄付する”というような社会的貢献を具体的に表現していることにあります。そのブランドの消費者はそのブランドを通して自分の意見や問題意識を社会に提案し、還元できるようになりました。消費者はブランドにオンボード(相乗り)できるのです。
D2Cブランドは商品の提供価値とそれ以上に、そのブランドを通して実現する社会を提唱します。
PやVでもD2Cブランドの特徴を記載しましたが、後半のCESがD2CをD2C足らしめている要素です。クリエイティブに関しては対象をグラフィック、画像、映像、テキストから商品のパッケージ、インスタやTwitterの投稿などとし、それらのどれをとってもそのブランドの世界観を表現する必要があります。ネット上には常時あふれんばかりのデザインや情報があります。その中で光るクリエイティブの設計と実行をする必要があります。
毎日新しい技術にスポット当たり、消費者は数年前なら考えられなかった利便性を今は当たり前のように活用しています。AIで学習しながら自動対応してくれるChatbotやSMS認証のワンステップで購入できるオンラインショップ、まるで商品が手元にあるように感じられるAR技術などオンライン販売の伸長は技術の伸長であるともいえます。
また、テレビなどのマスメディアと対比する形で、オンラインではデータを活用したよりパーソナルな接客が可能となっています。技術はいつも消費者を楽しませ、より体験が生まれます。D2Cブランドがよりよい体験型メディアとして価値を提供できるようエンジニアリングは重要なポイントとなります。
サービスは広義で言えばP(Product) に入りますが、抽出すると“オンライン販売特有のサービス”を提供する必要があります。多くの場合、オンライン販売のデメリットとしては試用・試着ができない、商品に不備があった時にサポートが受けられるかわからない、店員さんのアドバイスを聞けないなどがあります。そういったデメリットがあっても徹底したサポートを行うことで顧客満足(CS)を獲得しなければなりません。例えばメガネメーカーのWarbyParkerではサイトで5つの商品を選らんで自宅で試着することができます。D2Cブランドをより身近に感じてもらうサービスの精神が重要となります。
まとめ
本記事では第一章のD2Cブランド不要論にてD2Cブランドを本当に検討するべきかというポイントを提起しました。それ以降はD2Cの概論として、体験型メディアであること、消費者のフロー、またプロダクト、ビジョン、クリエイティブ、エンジニアリング、サービスに分けてD2Cブランドのポイントの整理を行いました。 ブランドと消費者がダイレクトに接することでブランドの世界観やあり方が見られることになりました。またその在り方に共感する消費者は自らがD2Cブランドの情報をSNS上で発信することが可能となりました。そのコミュニケーションの設計を適切に行うことにD2Cブランドとしての成功があります。D2C-squareでは様々なメーカーやサービスの支援を行っています。D2Cに関するお問い合わせこちらからお願い致します。